松井 研究室

(原子核理論,ハドロン/クォーク物質論)

教官: 松井 哲男 (教授) 個人ホームページへ

研究室: 16号館 323B

電話: 5454-6512


研究の概要

高温・高密度のクォーク物質、その高エネルギー原子核衝突における生成と時 空発展、そのシグナルの研究を行っている。

現在、米国のブルックヘブン国立研究所やスイスにある欧州原子核研究機構 (CERN)では、原子核を超相対論的エネルギーに加速して正面衝突させ、高温・ 高密度の物質をつくる実験が行われている。衝突のエネルギーが低く、生成さ れた物質の温度が比較的低い場合には、この物質は核子や中間子のようなハド ロンの多体系とみなすことができるが、エネルギーが高くなり、十分に高温に なると、拡がりをもったハドロンは押し潰され、その基本構成子であるクォー クや、その間に働く力を媒介するグルオンがバラバラになった状態、クォーク・ グルオンのプラズマ、がいったんできることが予想される。このような極限物 質は高温の初期宇宙において存在し、宇宙の膨張・冷却とともにハドロンの集 団へと進化したと考えられているが、原子核衝突の場合にも、非常に短い時間 にハドロンに崩壊するであろう。従って、クォーク・グルオンプラズマが実際 できたことを検証する為にも、その生成から崩壊までの時空発展の過程を理論 的に理解することが重要な研究課題である。この問題を、場の量子論から、 (相対論的)流体力学、運動論、統計力学等の様々な手法を用いて研究している。

最近の研究では、クォーク・グルオンプラズマのハドロン化のときほぼ同時に 起こることが予想されている「カイラル相転移」の動力学の研究をQCDの低エ ネルギー有効理論を用いて行っている。また、クォーク・グルオンプラズマ生 成のシグナルとして私達が提唱してきた、$J/\psi$粒子のような重いクォーク とその反粒子でできたハドロンの生成抑圧が、最近のCERNの実験で実際に観測 されているが、その理論的な解釈、特にプラズマ遮蔽効果による生成抑圧と他 の抑圧メカニズムとを識別する研究を行っている。